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母のウエスタンブーツ

Ayaさんのところでブーツの話が出ていたので、
ふと思い出して、書きたくなってしまったことがある。

母が30年以上前の独身時代に買った、ウエスタンブーツがある。
当時、大手メーカーでバリバリ働いていた母が、大奮発して買ったブーツ。
大事にしすぎてあまり履く間のないまま、そのうち結婚し、子育てが忙しく
物入れの奥深くに仕舞い込んでしまっていた。





それを私が発見したのが、7年ほど前。
当時流行っていた、ポインテッドトゥにピンヒールのような靴とは大きく違って、ゆるくラウンドしたつま先に、太いカカト。
さりげないデザインではあったけれど、茶色いウエスタンブーツ。
ウエスタンブーツなんて、今でこそ流行っているけれど、当時は一部の独特な人達しか履いていなかったんではないだろうか?
渋谷のフロンティア靴店の店頭には、いつも並んでるけどね。今もあるかな?
(これ、わかる人いるかなぁ?・笑)

でも、長い年月を乗り越えてきた革の深い色合いに一目で気に入ってしまい
「これ、私にちょーだい」言ってはみたものの、
長い間お手入れされてこなかった革は、プラスチックかはたまた金属かのようにガチガチに硬くなってしまっていて、とても足を入れられるようなシロモノではなかった。
クリームでお手入れして、老舗の靴屋さんにクリーニングと補修に出して、なんとか履けるようになった時は、母も一緒に喜んでくれた。
それから、毎年大事に履き続け、踵は一度新しい物に替えて、靴裏は何度張り替えたことだろう。。

30年以上の年月を乗り越えてきた、モノの命。
時間をかけないと、きっと現れてこないであろう風合いと、深い革の色。
どんな高級ブランドの何十万円もするピカピカの靴よりも、
若干くたびれた自分のブーツの方が、素晴らしいと思った。ひそかな自慢だった。


大切にしていたブーツだけれど。
今年の春に、補修不可能なほどに大きく革が破れてしまった。
つま先の、小指があたって摩擦の大きい部分に、パックリ大きな穴が開いてしまった。
どうにか出来ないものかと奔放し、前出の靴屋さんに相談してみたが、こうなってしまってはもう今までのように履くことは無理だと言われてしまった。
ガックリと肩を落とす私に、職人さんが言った。
物の価値が儚くなっている時代ですけど、お母さんから娘さんへ、40年間も受け継がれて履いてもらったこのブーツは、充分役目を果たして喜んでると思いますよ。
その言葉に、ドキリ。
このブーツは、大切に履いてきたけれど、
夏に履くサンダルなんかは、結構安価な物を買ってきては、1シーズンで履き潰して、ポイッとゴミに出してしまっていた私。
恥ずかしい。。
内容は違うけれど、腐ってもクリエイターの仕事をやってきた者として、物の価値を見失いすぎていたなぁっと、反省。


そこから、買い物の仕方が変わった。
出来るだけ長く着れるデザイン。色合い。
多少お値段が高くても、きちんとした縫製の物を出来るだけ選ぶようになった。
それでもやっぱり流行の小物も欲しくなるので、そういう物はチープに手に入れたり、自分でリメイクして作ったり。。

長く傍に置いておくと、愛着もわくし、だんだんと自分の『モノ』になっていく。
出来上がって、売っているのを買うのが完成品じゃない。
自分で、またそこからイロを加えていきたい。

by mame_hedgehog | 2005-11-17 17:28 | 日々のイロイロ  

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